風俗営業許可の場所的要件とは

福岡市博多区の行政書士つる(@ryoya_tsurusawa)です。

家の近くに映画館やゲームセンターなどの娯楽施設があればいいなぁ、と思ったことはありませんか?
子供の頃、私はそう思っていました笑

けど、騒がしくて生活に支障をきたしたり、子供に悪影響を及ぼすかもしれませんよね。

そういったことが起こらないよう、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)では「場所的要件」が定められています。

「場所的要件」とは、風俗営業許可を取得するために必要な3つの要件の1つです。

①人的要件
「人的要件」とは、申請者自身が満たさなければならない条件です。

②場所的要件
「場所的要件」とは、開業する場所で満たさなければならない条件です。

③構造的要件
「構造的要件」とは、店の構造や設備上満たさなければならない条件です。

「人的要件」はわかりやすかったけど、「場所的要件」と「構造的要件」は難しそう・・・。

つる

ですので、今日は「場所的要件」について説明します。

都道府県によって異なる「場所的要件」

風俗営業できる場所は、都道府県条例(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例)によって定めれています。

用途地域による制限と保全対象施設による距離制限の2つです。

営業所及び移動風俗営業の設置を制限する必要があるものとして条例で定める地域は、次の各号のいずれかに該当するものとする。

一 都市計画法に規定する第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域又は田園住居地域

二 前号に掲げるもののほか、別表第一の上欄に掲げる施設の敷地から、当該施設ごとに、同表の下欄に掲げる営業所が所在することとなる地域の区分に応じ、それぞれ同欄に定める距離を超えない区域内の地域

出典:風営法施行条例(福岡県)第2条

一号では、用途地域による制限
二号では、保全対象施設との距離制限
を規定しています

各制限について説明する前に、「場所的要件」の理解を深めて頂くために、都市計画と用途地域について説明します。

都市計画とは

都市計画の目的は、住みやすい街をつくることです。
そのため、都市計画を実施するエリアを決めなければなりません。

そのエリアは、都道府県知事や国土交通大臣が「都市計画区域」を指定します。

「都市計画区域」は、さらに「市街化区域」「市街化調整区域」「非線引き区域」に分けられます。

「市街化区域」とは、積極的な街づくりのため、おおむね10年以内に市街化を図るべき区域です。
用途地域を必ず定める必要があります。

「市街化調整区域」とは、自然環境を守るため、市街化を抑制すべき地域です。
原則、用途地域は定められません。

「非線引き区域」とは、「市街化区域」又は「市街化調整区域」の方向性が決まっていない区域のことです。

また、都市計画区域外であっても、放置すると建築や造成がどんどん行われ、居住性や環境が悪化します、、、。

そうした乱開発を防ぐために「準都市計画区域」が設けられています。

つる

まとめるとこんな感じです。

用途地域とは

用途地域とは、計画的に市街地を形成するために、都市計画法で用途(住居系8地域、商業系2地域、工業系3地域)によって分けられた13つの地域です。

用途地域には、建築できる建物の種類や建蔽率・容積率・高さ制限が定められています。

住居系、商業系、工業系のおおまかなイメージ図です。

つる

もし、用地地域がなかったら、家の近くに工場ができて騒がしいですよね・・・。

用地地域は街の雰囲気を決めているんですね。

次に、各用途地域について簡単に説明します。

住居系

人が住むことを目的とした用途地域です。

①第一種低層住居専用地域

●定義
低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第1項

建物に10m又は12mの高さ制限があります。
閑静な住宅街や高級住宅街をイメージください。

②第二種低層住居専用地域

●定義
主として低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第2項

閑静な住宅街にコンビニ・クリーニング店・床屋等、日常生活に必要な店舗なら建設できます。

③田園住居地域

●定義
農業の利用の増進を図りつつ、これと調和した低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するために定める地域

引用:都市計画法 第9条第8項

閑静な住宅街で農業もやりやすいようにという趣旨から2018年に導入された新しい用途地域です。

④第一種中高層住居専用地域

●定義
中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第3項

マンションのための地域で、大学・病院の他500㎡以下の店舗などを建設できます。

⑤第二種中高層住居専用地域

●定義
主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第4項

主にマンションのための地域で、大学・病院の他1500㎡以下の店舗などを建設できます。

⑥第一種住居地域

●定義
住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第5項

住居以外にも3,000㎡以下の店舗やホテル、ボーリング場なども建設できます。

⑦第二種住居地域

定義:主として住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第6項

住居以外にも10,000㎡以下の店舗やゲームセンター・パチンコなども建設できます。

つる

だんだん賑やかになってきましたね。

⑧準住居地域

●定義
道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第7項

幹線道路上のエリアです。

商業系

商売がやりやすいように設けられた用途地域です。

⑨近隣商業地域

●定義
近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第9項

商店街をイメージください。

⑩商業地域

●定義
主として商業その他の業務の利便を増進するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第10項

様々なお店や商業施設が集まる駅周辺をイメージください。

工業系

工場を建てて工業を推進するために設けられた用途地域です。

⑪準工業地域

●定義
主として環境の悪化をもたらす恐れのない工業の利便を増進するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第11項

危険性の低い小規模の工場と住宅・店舗を建設できます。

⑫工業地域

●定義
主として工業の利便を増進するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第12項

工場(どんな工場でもOK)と住宅・店舗を建設できます。

⑬工業専用地域

●定義
工業の利便を増進するため定める地域

引用:都市計画法 第9条第13項

工場のための地域で、どんな工場でも建設できますが、環境が悪いため、住宅・学校・病院を建設できせん。

つる

ここまでが用途地域の説明です。

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

用途地域による制限(福岡県の場合)

都道府県によって、用途地域による制限が異なるのでご注意下さい。
以下、風俗営業できる用途地域をまとめています。

出典:風営法施行条例(福岡県)第2条第1項第1号

まとめると、住居の文言がある用途地域では、風俗営業できません。

保全対象施設との距離制限(福岡県の場合)

保全対象施設とは、風俗営業によって悪影響を受けないよう風営法や条例によって一定の保護を受けている施設です。

福岡県では、商業地域とそれ以外の地域で保全対象施設からの営業禁止の距離が異なっています。

以下、保全対象施設との距離制限をまとめています。

保全対象施設から下記の距離を超えなければ、営業許可を取得できません。

出典:風営法施行条例(福岡県)第2条第1項第2号 別表第一

まとめ

風俗営業許可取得には、3つの要件をクリアすることが必要です。

そのうち、「場所的要件」について説明しました。

風俗営業許可が必要なお店を開業するにあたって、開業場所は非常に重要です。

「人的要件」と異なり、「場所的要件」では現地での事前調査が不可欠です。

保全対象施設は、地図上に表示がなくとも現地に建っているかもしれないからです。

その他、お店の開業手続きで困ったことがありましたら、身近な行政書士へ相談されることをおススメします。

私の記事が風俗営業許可の「場所的要件」の理解につながれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。

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