福岡市博多区の行政書士つる(@ryoya_tsurusawa)です。
最近、どこの飲食店もきれいに清掃されていますよね。
トイレ清掃の記録を掲示したり、始業前や終業後もしっかり清掃されているかと思います。
衛生管理がしっかりしている飲食店は、安心して食事を楽しめます。
けれど、いざ飲食店を開業する時、衛生管理ってどういう基準で取り組めばわからないですよね。
名前を聞いたことあるけど、衛生管理手法のHACCP(ハサップ)って何?
HACCPを実施しなかったらどうなるのか?
今日は、2021年から義務化されたHACCPについて紹介します。
HACCPとは
HACCPとは、1960年代に宇宙飛行士の安全な食品を作るために、宇宙食の安全性確保のためにNASAによって考案された衛生管理手法です。
では、従来の管理方法とは何が違うのかと言いますと・・・
従来の管理方法は、「抜き取り検査」が主流でした。
工程1⇒工程2⇒工程3⇒工程4⇒【完成品の(抜き取り)】
抜き取り検査では、【完成品】の一部を抜き取り検査するだけですので、検査していない食品の安全性が確保されていません。
そこで、もっと確実に食品の安全を確保できる方法がないかということで、考案されたのがHACCPです。
HACCPでは、食品を作る工程で重要な工程を定期的に管理・記録することで、安全性が確保された食品だけが次の工程に進みます。
そのため、完成品の抜き取り検査に依存せず、食品の安全性が確保されます。
工程1⇒工程2(管理・記録)⇒工程3⇒工程4(管理・記録)⇒【完成品】
工程ごとの危害を分析して重要な工程の管理点を英語にすると、Hazard Analysis (危害分析) and Critical Control Point (重要管理点) となります。
英語の頭文字をとった略語がHACCPです。
次に、危害分析と重要管理点について簡単に説明します。
●危害分析
食品の受入れから出荷までに各工程で可能性がある危害要因を洗い出す。・危害分析の例
石・金属などの異物
細菌・ウイルスなどの食中毒汚染●重要管理点
食品の安全にとって重要な工程には、管理基準を定める。
管理基準とは、逸脱すると食品の安全性を確保できなくなる基準です。・重要管理点の例
篩による選別
食品の加熱処理・管理基準の例
篩の破れがないかチェック(1日2回以上)
加熱処理の温度と時間(90℃以上で3分以上)
HACCP義務化の背景には、インバウンドの増加や飲食店の食中毒が多いこと(厚生労働省:令和3年食中毒発生状況P18-22)があると考えられています。
国際標準のHACCPを取り入れることで、日本の食品の安全性向上を図っています。
ちなみに、HACCPの導入は義務化ですが、第三者認証の取得は義務ではありません。
飲食店のHACCPとは
飲食店のHACCPは、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(小規模事業者)」に該当します。
※小規模事業者とは、具体的には、飲食店・喫茶店・居酒屋・洋菓子店・弁当などの移動販売や露店販売です。飲食に関わるほぼ全ての店が対象です。
そもそも、HACCPは、「HACCPに基づく衛生管理(大規模な食品工場など)」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(小規模事業者)」に分けられています。
2つに分けた理由は、小規模事業者にHACCPを導入することが時間的にも費用的にも難しいことを国が考慮したためです。
つまり、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(小規模事業者)」とは、国が定めた簡略化HACCPと言えます。
ただ、食品と言っても業種毎に衛生管理は異なるので、各食品事業者団体が業種別に手引書を作成しています。
ここでは、小規模な一般飲食店の「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」について手引書に沿って簡単に説明します。
小規模な一般飲食店では、一般衛生管理(全ての食品の共通事項)と重要管理(食品の調理法に応じて管理する事項)の実施・記録が求められています。
●一般衛生管理
食材関連
①原材料の受入確認
②冷蔵・冷凍庫の温度確認
③交差汚染・二次汚染の防止施設関連
①器具等の洗浄・消毒・殺菌
②トイレの洗浄・殺菌従業員関連
①従業員の健康管理等
②衛生的手洗いの実施●重要管理
次のグループにメニューを分類し、それぞれのチェック方法を決めます。第 1グループ:非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供)
例:刺身、生野菜サラダ、酢の物など第 2グループ:加熱するもの(冷蔵品を加熱し、熱いまま提供)、(加熱した後、高温保管を含む)
例:焼き魚、焼き鳥、茶碗蒸し、コロッケなど第 3グループ:加熱後冷却し再加熱するもの、または、加熱後冷却するもの
引用:厚生労働省 小規模な一般飲食店 HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書
例:カレー、シチュー、スープ類、ポテトサラダ、ゆで卵など
重要管理のポイントは、温度と時間です。
10~60℃の温度帯は、細菌等が最も増殖しやすい温度帯ですので調理食品が長時間とどまらないよう注意します。
記載されているのは、衛生管理の基本的なことです。
罰則
HACCPの未実施による罰則は、現時点では法律で定められていません。
ただし、食品衛生法違反の最も大きい罰則(第81条及び第88条1項1号)では、「3年以下の懲役」または「300万円以下(法人の場合は1億円以下)の罰金」となっています。
HACCPを導入せず、何らかの食品衛生法違反となった場合には、罰則を受ける可能性があります。
また、食品衛生法では、「罰則などの規定は各自治体に委ねる」(第51条3項、第52条3項)という方針をとっており、条例による罰則を受ける可能性もあります。
そして、HACCP義務化を無視し続けると、衛生管理計画書や実施記録が提出できないので、営業許可の更新不可など営業していく上で不利になります。
まとめ
いかがでしょうか?
今回はHACCPの概要から飲食店のHACCPについて説明しました。
飲食店で「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(小規模事業者)」を実施していないようでしたら、至急導入することをおすすめします。
HACCPを導入していない場合、営業許可の更新の際、衛生管理計画書や実施記録を提出できないので更新できません。
衛生管理は、消費者の安全を守るだけでなく、事業者の飲食店を守る上で大切なことです。
もし、飲食店の衛生管理や記録の方法でお悩みでしたら私に相談ください。
私の記事がHACCPの理解につながれば幸いです。
ここまで読んでいただきありがとうございました。